はじめに:見えない天体の「重さ」を知る挑戦
夜空に瞬く星々。
その中には太陽系の外、何光年も離れた「系外惑星」と呼ばれる惑星が存在しています。
驚くべきことに、天文学者たちはこのような遠方の惑星の「質量」まで測定しています。
では、いったいどうやって?光ですらほとんど届かないような距離の天体の「重さ」を知るなんて、まるで魔法のように感じるかもしれません。

質量測定の主な方法は?
遠くの惑星の質量を測定するためには、直接その惑星を見るのではなく、周囲に与える影響を観測します。具体的には以下の2つの方法が広く用いられています。
- ドップラー分光法(視線速度法)
- トランジット法とTTV(Transit Timing Variations)
ドップラー分光法:星の「揺れ」から質量を測る
惑星は恒星の周りを公転していますが、実は恒星もわずかに揺れています。これは、惑星の重力によって引っ張られるためです。この揺れを検出するのが「ドップラー分光法」です。
光の波長は、物体が近づくと短くなり(青方偏移)、遠ざかると長くなります(赤方偏移)。星の光を分光すると、この波長の変化から、星が前後に動いていることが分かり、そこから惑星の質量を推定できます。
ただし、この方法で求められるのは「最低質量」です。軌道の傾きによっては本当の質量がもっと大きいこともあります。
トランジット法とTTV:星の明るさと惑星の重力
トランジット法では、惑星が恒星の前を通過するときに星の明るさがわずかに暗くなる現象を捉えます。この明るさの変化から、惑星の半径を推定できます。
さらに、Transit Timing Variations(TTV)という手法では、複数の惑星が存在する系で惑星同士の重力干渉によってトランジットのタイミングが変わる様子を解析します。その時間差のパターンから、惑星の質量を割り出すことができます。
この方法は特にケプラー宇宙望遠鏡の観測によって多くの成果を上げました。
重力レンズ効果:銀河すら使った間接測定
重力が空間を曲げるというアインシュタインの一般相対性理論によれば、巨大な質量体の近くを通る光は曲がります。この現象を利用するのが「重力マイクロレンズ法」です。
背景の恒星の前を惑星が通過すると、惑星の重力によって星の光が増幅され、一時的に明るく見える現象が起こります。この光の変化の特徴から、惑星の質量と軌道距離を推定することができます。
これは特に遠方の惑星や、主星が見えない場合にも有効な方法です。
直接撮像による質量の推定
一部の若くて熱い巨大惑星は、赤外線で直接観測されることもあります。その場合、明るさやスペクトルから、モデルと比較して質量を推定します。
ただしこの方法は高性能な望遠鏡と、惑星と恒星の間に大きな明るさの差があることが前提です。これまでのところ、大質量惑星や準恒星的な天体(褐色矮星)に限られます。
誤差と限界:惑星質量の「不確実性」
惑星の質量を測定するこれらの方法にはすべて誤差があります。たとえばドップラー法では軌道傾斜角が不明な場合、実際の質量は測定値よりも大きい可能性があります。
TTVでも、他の惑星の存在や星の活動によって、解析が難しくなることがあります。それでもこれらの手法を組み合わせることで、より高精度な質量測定が進められています。
未来の技術と展望
次世代望遠鏡の開発によって、より微細な揺れや光の変化を捉えられるようになると期待されています。たとえば、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)や、欧州宇宙機関のPLATOミッションなどがその先駆けです。
さらに、質量だけでなく密度や大気の成分まで解析することで、生命の痕跡を探す試みも始まっています。
まとめ:遠く離れた世界の重さを知る
惑星の質量を測ることは、単なる物理的な量を知るだけではありません。その惑星の性質、大気、さらには生命の可能性を探る第一歩なのです。私たちは光のかすかな揺れや星の鼓動から、遠い世界の姿を少しずつ明らかにしています。
宇宙の探査はまだ始まったばかり。あなたが次に夜空を見上げたとき、その背後に広がる無数の惑星たちを、少しだけ身近に感じてみてください。


