たとえば、「ウーウーウー」という音が、近づいてくると高く、遠ざかると低く聞こえることに気づいた人も多いでしょう。
実はこれ、「ドップラー効果」と呼ばれる物理現象によるものです。
本記事では、このドップラー効果がなぜ起こるのか、音の波とは何か、そしてこの現象が私たちの生活や科学技術にどのように応用されているのかを、じっくりわかりやすく解説していきます。

音とは何か?──空気の「振動」で伝わる
まずは、音がどのように伝わるかを確認しておきましょう。
- 音は「空気の振動(圧力の変化)」が耳に届くことで感じられます。
- この振動は「音波(縦波)」として空気中を伝わっていきます。
音波は空気の密度の高い部分(圧縮)と低い部分(希薄)が交互に並んだ波の形で進みます。この波の特徴には以下のような要素があります。
- 周波数(Hz):1秒間に振動する回数。高いほど音が「高く」聞こえる。
- 波長:1つの波の長さ。周波数と波の速さによって決まる。
- 音速:空気中ではおよそ 約340m/s(気温によって変動)。
これらの性質をもとに、「ドップラー効果」がどのように音を変化させるのかを見ていきましょう。
ドップラー効果とは?──動く音源と観測者
ドップラー効果(Doppler Effect)は、音源と観測者が相対的に動くときに、音の周波数が変化して聞こえる現象です。
オーストリアの物理学者クリスチャン・ドップラーが1842年に提唱したもので、以下のような場合に起こります:
- 音源が観測者に近づいてくると、波が圧縮されて音が高く聞こえる。
- 音源が遠ざかると、波が引き伸ばされて音が低く聞こえる。
救急車が通過するときに、「ウーウー」→「アーアー」と変化するのは、まさにこのドップラー効果の代表例です。
音の波はどう変わるのか?──図で理解しよう
イメージしやすくするために、波の形の変化を図で表してみましょう。
① 音源が静止している場合:
音波は等間隔で広がっていく → 観測者の位置に関係なく同じ周波数で聞こえる。
② 音源が近づいてくる場合:
波の前方が押し縮められる → 波長が短くなり、周波数が高く → 高い音に聞こえる。
③ 音源が遠ざかる場合:
波の後方が引き伸ばされる → 波長が長くなり、周波数が低く → 低い音に聞こえる。
救急車の「サイレン」が変化する理由
実際に道路で救急車が通り過ぎるとき、以下のような現象が起こります。
- 近づいてくるとき:サイレンの音は高く鋭く聞こえる
- 通り過ぎる瞬間:一瞬、音の高さが急に変わる
- 遠ざかるとき:サイレンの音は低く鈍く聞こえる
これはサイレンそのものが音の高さを変えているわけではなく、音の波が観測者(私たち)に届くまでの形が変わっているからなのです。
式で見るドップラー効果
ドップラー効果は、次のような式で定量的に表せます:
f' = f × (v ± vo) / (v ∓ vs)
f':観測者が聞く周波数f:音源の発する周波数v:音速(約340 m/s)vo:観測者の速度(音源に向かうなら +)vs:音源の速度(観測者に向かうなら +)
これにより、音源や観測者が移動する速度に応じて、聞こえる音の高さが数値で計算できます。
日常や技術での応用例
ドップラー効果は救急車の音だけでなく、さまざまな場面で応用されています。
- レーダー測定(スピードガン):警察や野球での球速測定に。
- 天体観測:恒星のスペクトルの赤方偏移・青方偏移で宇宙の膨張を分析。
- 医療用ドップラー超音波:血流の測定に使用。
- 気象レーダー:雨雲の動きや風向を予測。
このように、ドップラー効果は私たちの暮らしと科学に深く関わっています。
ドップラー効果は光にも起こる?
実は、ドップラー効果は音波だけでなく、光の波にも起こります。
たとえば、遠くの銀河が赤く見える「赤方偏移」は、銀河が地球から遠ざかっている証拠であり、宇宙が膨張していることを示す重要な証拠のひとつです。
まとめ
救急車のサイレンが「近づくと高く、遠ざかると低く聞こえる」現象は、ドップラー効果という物理現象によって起こります。
- 音は空気中を波として伝わり、音源の動きによって波の間隔が変化する。
- 波が縮むと高音、広がると低音になる。
- この現象は、音だけでなく光や電波にも応用されている。
私たちが日常的に聞く音の変化の背後には、こんな面白い物理の法則が隠れているのです。



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